当社が誇るエンジニア

5年間の荒修行

高木さんは、入社して半年が経つと、数か月ごとのメーカーへの出張を命じられた。内容は、客先の生産設備のソフト設計・立ち上げ・検査までを一人でやる、まさにワンストップサービスだ。自分の会社のこともよく分からない若者が、客先と向き合う日々が続いた。もちろん簡単なことではなく、自身の設計ミスによって機械を壊してしまい、客先に迷惑をかけることも少なくなかった。しかし、それを直すのも一人でやるから、自然と技術も精神も鍛えられていった。
 5年も続いた荒修行のなかで、多様な客先と付き合いながら、自分なりのお客様への対応を心得た。また、辛い業務の中でも、近くにいた同期と愚痴を言い合い、ストレスを発散して乗り切った。そんな同期とは、今もOBを囲んで定期的に集まっている。

来た仕事は断らない

その後、発電所での水処理設備工事をともにした、浄化槽・排水処理装置を製造する大手企業の同い年の担当者と馬が合い、それからもいくつかの仕事を一緒にした。大きな仕事では、沖縄の「美ら海水族館」の海水ろ過設備の自動化があった。訪れたことがなくとも、高さ8.2m、幅22.5mの世界最大級の水槽を知る人は多いだろう。多種多様な魚が色鮮やかに泳ぐその水槽の水をきれいに維持するために、70基のろ過装置を稼働させているのだ。今でも手作業で装置を操作している水族館も多いが、建設当時(2002年開館)70基を自動コントロールさせるというのは、国内でも珍しいことだった。大きな挑戦をともにすると繋がりも強くなるのか、その担当者から、ビール生産設備での緊急依頼があった時、高木さんは年末の飛行機の最終便に飛び乗り、現地に向かった。
 高木さんの流儀は、「来た仕事は断らない。赤字にならないのならやる」だと教えてくれた。「ただ、部下は大変かも」と少し苦笑いを浮かべながら。1度断ってしまうと、繋がりはそこで終わってしまう。小さい案件でも繋がりがあれば、突然大きな仕事が舞い込んでくることがあると経験から知っているからだ。

やろうと思えば、やれる

所属としては、通信システム部の15年間が最も長い。時代はスマートメーターに切り替わった頃で、未知の装置スマートメーターの情報・仕事をとるために社外のあらゆる会議に足繁く通った。受注できるかどうかの大勝負ではあったが、顔を合わせることで繋がりを切らせないことが、重要だと感じていた。不遇の期間も長かったが、当社の実績や信用を粘り強くアプローチし続けた結果、受注を勝ち取ることができた。納期は従来の三分の一というハイスピードだったが、当時の組織の分担性やチームワークもあり、期日までに納品することができた。「やろうと思えば、やれる」。そんな自信が部内でも広がった。そして、大手企業とやっていくには、スピードが最重要視されるのだと身をもって知った。

当面の目標

去年からは、電子応用システム部の部長を任されている。当社でも歴史の深い「放流警報装置」や「アナログ移動無線システム」を扱う部署だ。着任早々、部内のルールの見直しや書類の電子化などの改革を行っている。長年、「趣味は仕事かも」と思うほど装置と向き合うのが好きだったが、部長となり、人をマネジメントする難しさを感じる日々だ。当面の目標は、部内のみんなを同じ方向に向けさせることと、「放流警報装置」を大手企業と組んでシェアを拡げることだ。また、部下のチャレンジもどんどん後押ししたい。かつて、自分が自由にやってきた時代があったように、今度は反対の立場で部下との繋がりを意識しながら見守っていきたいという。

取材実施月:2021年2月

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